鉄筋継手部分の検査方法
鉄筋継手部分の検査方法には、鉄筋引張試験検査と超音波探傷試験検査などがあります。
イン・システムでは、主に超音波探傷試験の検査にてガス圧接継手、溶接継手、機械式継手の鉄筋継手部分を検査します。(外観検査も含む)
超音波探傷試験検査のことを別名で非破壊検査と呼びます。
引張試験の検査について
鉄筋継手部分の引張試験検査とは、引張試験機で鉄筋端を正反対方向に切断されるまで引っ張り、鉄筋継手部分の強度を試験検査します。
・引張試験検査のメリット
検査した鉄筋継手部分の強度を明確に調べることが出来ます。
・引張試験検査のデメリット
検査時に出来上がった継手部分の鉄筋を切断する為、鉄筋作業が一時的にストップします。
また、大半は分析センターに切断した鉄筋を持って行く為に時間と手間がかかり、検査する箇所も超音波探傷試験検査に比べて少なく、検査箇所も1ロットに対して3~5本程度と少ないです。(全本数の検査は不可能)
超音波探傷試験の検査について
超音波探傷試験検査とは、超音波専用機械から超音波パルスを探触子から発信させることによって鉄筋内部を調べることができ、内部に欠陥があれば受信器を介して専用機械に欠陥の有無が表示されます。検査方法は、K走査方法を用いて継手のL/Rを試験検査します。
・超音波探傷試験検査のメリット
引張試験検査に比べて検査する箇所は、1ロット30本と検査範囲が広がりますので、検査の精密度が上がります。(全本数の検査は可能です)
・超音波探傷試験検査のデメリット
引張試験検査に比べて、検査した鉄筋継手部分の強度を調べることが出来ません。(高い確率で品質は保証できます)
超音波探傷試験の検査方法について
イン・システムでは、主に日本クラウトクレーマー㈱のガス圧接部専⽤探傷器(USG-27A)を用いて検査します。
JISZ3062( 鉄筋コンクリート用異形鉄筋棒鋼ガス圧接部の超音波探傷試験方法及び判定基準 )に準じて試験検査します。
ガス圧接継手部分の検査手順
1.外観検査をする
目視やノギス、SYゲージなどを使用して、ふくらみの直径不足やふくらみの長さ不足(つば型)、圧接面のずれ、偏心、折れ曲がり、片ふくらみ、垂れ下がり、焼き割れ、へこみなどをチェックします。
![]() 膨らみの直径についての外観基準 D19:26.6mm以上 D22:30.8mm以上 D25:35.0mm以上 D29:40.6mm以上 D32:44.8mm以上 D35:49.0mm以上 D38:53.2mm以上 D41:57.4mm以上 D51:71.4mm以上 膨らみの長さについての外観基準 D19:20.9mm以上 D22:24.2mm以上 D25:27.5mm以上 D29:31.9mm以上 D32:35.2mm以上 D35:38.5mm以上 D38:41.8mm以上 D41:45.1mm以上 D51:56.1mm以上 鉄筋中心軸の偏心量についての外観基準 D19:3.8mm以下 D22:4.4mm以下 D25:5.0mm以下 D29:5.8mm以下 D32:6.4mm以下 D35:7.0mm以下 D38:7.6mm以下 D41:8.2mm以下 D51:10.2mm以下 圧接面のずれについての外観基準 D19:4.8mm以下 D22:5.5mm以下 D25:6.3mm以下 D29:7.3mm以下 D32:8.0mm以下 D35:8.8mm以下 D38:9.5mm以下 D41:10.3mm以下 D51:12.8mm以下 |
2.専用探傷器の調整や鉄筋メーカーを確認します
鉄筋径(D19~51)に応じて専用探傷器の設定を行います。また、現場監督(代理人)や現場を管理している鉄筋業者などに鉄筋メーカーの確認をします。
3.基準レベルを決めます(透過走査法)
鉄筋側面にスケールをあて、約2.8D(デシベル)位置にグリセリン(濃度75%以上)を塗布します。探触子をリブ面に向かい合わせに設置して片側を固定。もう一方を細かく走査して最大透過パルスを求めます。
4.合否判定レベルの設定
探傷感度を基準レベルの-24dBに合否判定レベルを設定します。
5.ガス圧接継手を探傷試験する
斜角二探触子法を用いて検査します。リブの両側を探傷し、合否判定レベル以上のエコー高さが出ると不合格となります。
※斜角二探触子法とは、送信探触子を約1.4Dの位置に固定し受信探触子を約1.4D±約1/4Dの範囲で繰り返し走査します。次に送信探触子をふくらみ付近に固定して受信探触子を約1.4D~約2Dの範囲で繰り返し走査します。最後に送信探触子を約2D位置に固定し、受信探触子を約1.4D~ふくらみ付近の範囲を繰り返しゆっくり(60mm/s程度)と走査します。 |
溶接継手部分の検査手順
1.外観検査をする
目視やノギス、SYゲージなどを使用して溶接部の割れや裏面の溶込み不良、裏面の溶落ち、ビードの不整、クレータのへこみ、余盛高さ、アンダーカット、偏心量、折れ曲がりなどをチェックします。溶接継手の場合、裏当て材があるので目視では見えずらいので注意が必要です。
2.専用探傷器の調整や鉄筋メーカーを確認します
ガス圧接継手部の検査手順と同じように、鉄筋径(D19~51)に応じて専用探傷器の設定を行います。また、現場監督(代理人)や現場を管理している鉄筋業者などに鉄筋メーカーの確認をします。
3.基準レベルを決めます(透過走査法)
ガス圧接継手部の検査手順と同じように、鉄筋側面にスケールをあて、約2.8D(デシベル)位置にグリセリン(濃度75%以上)を塗布します。探触子をリブ面に向かい合わせに設置して片側を固定。もう一方を細かく走査して最大透過パルスを求めます。
4.合否判定レベルの設定
探傷感度を基準レベルの-18dBに合否判定レベルを設定します。
5.溶接継手を探傷試験する
直角K走査法や斜めK走査法などを用いて探傷検査します。合否判定レベル以上のエコー高さが出ると不合格となります。
※1.直角K走査法とは、中央部に送受信の探触子を1.4dに配置し各、探触子をおおよそ1dの範囲を走査します。(リブと並行に走査)次に送信側探触子を2.8dに配置し、受信側探触子を溶接部に近接させて、おおよそ1dの範囲を走査します。最後に送信側探触子を溶接部に近接させて受信側探触子を2.8dに配置し、おおよそ1dの範囲をゆっくり(60mm/s程度)と走査します。
※2.斜めK走査法とは、直角K走査法と走査方法は同じですが探触子を20度傾けて左右1/2範囲を探傷検査します。 |
機械継手部分の検査手順
1.外観検査をする
・ねじ節鉄筋継手について
カプラーに有害な損傷がないこと。挿入マークが施されていること。カプラー端が挿入マークの所定の位置にあること。合わせマークがずれていること。カプラーの両端からグラウト材が溢れ出ていること。をチェックします。
・モルタル充填継手について
スリーブに有害な損傷がないこと。挿入マークが施されていること。スリーブ端が挿入マークの所定の位置にあること。空気排出孔よりモルタルが排出していること。などをチェックします。
・端部ねじ加工継手について
カプラー、固定ナットに有害な損傷がないこと。所定の挿入長さであること。合わせマークがずれていること。などをチェックします。
・鋼管圧着継手について
挿入マークが施されていること。スリーブ両端と挿入マークが所定の位置にあること。スリーブの圧着後に外径が規定値以下であること。圧着による割れや有害な傷がないこと。などをチェックします。
2.汎用探傷器の調整やパルス位置の調整をします
・JRJS0003:2015表面SH波法の場合(パルス位置の調整)
パルス位置の調整は、STB標準試験片または鉄筋の端部を用いて行います。(アナログ探傷器の場合は音速とパルス位置の2点校正を行う)
探傷器画面を観察し、端部のエコーを視認して画面約60%のエコー高さになるように感度を調整します。
30%(変更可)高さのゲートとの交点のビーム路程が100mmと表示されるようにパルス位置(ゼロ点)を調整します。
※パルス位置の調整における注意点
60%、30%などの設定は絶対的なものではありません。画面を総合的に観察して端部のエコーを特定して正しく測定できるように感度やゲート設定を変更する必要があります。波形の状態に応じて適切に変更するにはNDIレベル1程度の知識と経験が必要となります。
・JRJS0003:2015SVコーナーエコー法の場合(パルス位置の調整)
パルス位置の調整は、RB-A方式またはRB-B方式で行います。(測定対象の鉄筋がD32であった場合、端部より130mm位置に探触子を置き、ビーム路程表示が130mmになるよう探傷器のパルス位置の調整を行う)
3.機械継手を探傷試験する
・JRJS0003:2015表面SH波法の場合
測定は、カプラーもしくはスリーブ端部から一定の距離に接触媒質を塗布し、その上に探触子を置き、多少の首振り走査をしながら探傷器画面の鉄筋端面からエコー高さが安定するまで探触子を強く押し付けます。
探傷器画面のエコー高さが安定したら、測定用のゲートをエコーの位置を含むように移動し、測定長さを読み取ります。
また、測定はカプラー又はスリーブを挟んだ両側の両リブ面で行い、それぞれの側の最も小さい値を測定の長さとします。
挿入の長さは、測定長さから定規で測定したカプラー/探触子間距離(ナット付きの継手ではナットの長さを含む)を引いた実挿入長であるので注意が必要です。(読み取り単位:1mm)
合否判定は、挿入長さが鉄筋最小挿入の長さよりも大きければ合格となります。(鉄筋最小挿入長さは機械式継手メーカーの仕様書又は施工要領書などから確認する)
・JRJS0003:2015SVコーナーエコー法の場合
測定は、接触媒質にグリセリン又はグリセリンペーストを使用します。カプラーもしくはスリーブ端部に近接した位置に探触子を置きます。
表面SV波探触子を鉄筋のリブ上で前後走査し、単峰でかつ鮮明なコーナーエコーを検出します。
検出確認後、更に前後走査し、エコーのビーム路程が約4Dとなる位置に探触子を固定します。
探傷器画面から伝播距離(ビーム路程)を読み取ります。(測定の長さとして記録)
定規等を使用してカプラー/探触子間の距離を計測します。(カプラー/探触子間距離として記録)
測定の長さからカプラー/探触子間距離を引いた長さを挿入長さとして記録します。
測定長さの注意点
鉄筋の最小挿入長が4Dよりも大きな機械式継手では、表面SV波探触子をカプラー又はスリーブに最接近した状態でビーム路程を読み取り、測定の長さとして記録する
挿入の長さは、測定の長さから定規で測定したカプラー/探触子間距離(ナット付きの継手ではナットの長さを含む)を引いた実挿入長であるので注意が必要です。(読み取り単位:1mm)
合否判定は、挿入長さが鉄筋最小挿入の長さよりも大きければ合格となります。(鉄筋最小挿入長さは機械式継手メーカーの仕様書又は施工要領書などから確認する)
・鉄筋の継手や手法の詳細については、鉄筋継手の工法を参照して下さい |
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